労働トラブルを解決するための方法

労働トラブルは泣き寝入りがほとんど

個別労働トラブルはもの凄く多いです。なぜ、そんなに多いのでしょうか。

1.不況によりリストラなど弱者である労働者にしわ寄せがかかりトラブルが多発。
2.終身雇用慣行の崩壊により退職、就職の機会が増え、それにともないトラブルも増えた。
3.労働組合組織率が2割を切るなど、労働組合の影響力が低下し、労働者が個別に対応せざるを得ない。
などの理由があるでしょう。

労働トラブルが発生したとき解決するのはごくわずかで泣き寝入りがほとんどです。

その原因として、裁判をしようとは思えない日本の裁判制度の現状があります。時間がかかる、お金がかかるなど・・・。困っている時に、裁判をすることで金銭的、時間的、精神的に多大な負担があるようでは何のための裁判か分かったものではありません。

労働相談の件数

全国の総合労働相談コーナーに寄せられた総合労働相談件数は平成16年度で823,864件になります。件数は年々増えており、平成13年度(下半期のみ)で251,545件→平成14年度625,572件→平成15年度734,257件→平成16年度823,864件です。

労働相談件数

ですが、労働裁判を行った労働者はどれだけいるのでしょうか。下の表は全国の地裁の労働訴訟事件数です。

  通常訴訟事件新受件数 仮処分事件新受件数
2000年 2,063 682 2,745
2001年 2,119 708 2,827
2002年 2,309 768 3,077

全国の総合労働相談コーナーに寄せられた総合労働相談件数と比較すると極めて小数の事件しか提訴されていないことが分かります。これほど裁判が少ないのはやはり、「費用がかかる」、「時間がかかる」が大きな理由でしょう。

この数字はあくまでも、公共機関である総合労働相談コーナーに寄せられた相談件数であり、民間機関、社会保険労務士事務所、弁護士事務所、労働組合などに寄せられた相談件数を含めますと、膨大な数になるはずです。

さらに、相談したいけれども会社内の立場を考えると相談できないとか、相談したことにより会社から不利益を受けるかもしれないとか、次の職が決まって相談している暇がないとかのいわゆる泣き寝入りも相当数あるはずであり労働トラブルが日常的に頻発していることが分かります。

労働トラブルの内容

労働トラブルの内容はいろいろですが代表的なものをあげると、解雇・リストラ・倒産、退職勧奨、サービス残業、転勤・配置転換・出向、賃金・ボーナスの減額、パワハラ、セクハラ、有給休暇、社会保険・労働保険未加入、労災・過労死、いじめ・嫌がらせ、試用期間、募集・採用、外国人労働、派遣労働、アルバイト・パートに関するものがあります。

このなかで特に相談が多いのは、パワハラ、解雇、退職勧奨、有給休暇のご相談です。

裁判によらない労働トラブルの解決方法

裁判以外にも労働トラブルを解決する方法はありますでいくつかあげてみます。

あっせん制度による解決

労働局や社会保険労務士会などで利用できる「あっせん制度」による解決があります。あっせん制度は裁判では難しい迅速な解決が可能です。手続きも簡易、非公開、費用も本人が手続きをすれば無料です。

あっせん制度では、国家資格者であり労働法の専門家である特定社会保険労務士に代理人を依頼することもできます。その場合、各特定社会保険労務士が定めた報酬が発生しますが、裁判で代理人を依頼する場合に比べれば比較的安価な報酬となっています。

労働基準監督署への申告

労働基準監督署に労働基準法違反や安全衛生法違反を申告することができます。労働基準監督署は会社に対して是正勧告などを行うことができます。特定社会保険労務士は労働基準監督署への同行、申告代行、アドバイスによって労働トラブル解決のお手伝いをすることが可能です。

内容証明郵便の送付

内容証明郵便とは、「いつ、誰が、誰宛に、どんな内容の手紙を出したのか」ということを、郵便局が公的に証明してくれるものです。内容証明郵便は相手側に心理的なプレッシャーを与える効果が期待できます。ただ、基本的に普通の手紙と同じであり強制力はありません。

内容証明郵便と普通の手紙の違い

・同じ文面のものを3通作成し、1通を郵便局で5年間保存してくれる。
・文字数などに一定の制限がある。

内容証明の効果

・相手にいつどんな手紙を出したかの証明になる。
・相手に心理的プレッシャーを与える
・内容証明郵便だけで労働問題が解決することもある。

ただ単に利用するだけでは解決率は高くならない

あっせんにしても労働基準監督署への申告にしてもただ単に利用するだけでは解決率は高くなりません。もし、それだけで解決できてしまうのなら泣き寝入りはこんなに多くなりません。

解決率を上げるためにはそれ相応の準備や知識などが必要です。当事務所は依頼者様と綿密に話し合い、対応策を考えていく事をお約束いたします。安心して、ご相談下さい。

社労士は労働法の専門家

社労士は労働法の専門家です。

労働法とは労働に関する法律の総称で、労働法という名の法律があるわけではありません。労働法には、労働基準法、労働者災害補償保険法(労災法)、雇用保険法、労働安全衛生法、賃金の支払の確保等に関する法律(賃確法)、最低賃金法、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)、育児休業・介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)などがあります。

社労士の仕事として年金相談がありますが、こちらの仕事のほうがテレビに社労士が出てたり、新聞、雑誌、書籍で社労士が執筆していることがあるので、「社労士は年金に関する専門家」だと思っている方が多いかもしれません。

しかし、年金相談に特化している社労士は別として、業務で対応が多いのは年金相談よりも労働法に関することです。

社労士以外の労働法の専門家

資格取得の試験科目に労働基準法、労働者災害補償保険法、雇用保険法などの労働法が数多く出題されるのは社会保険労務士試験のみです。司法試験には労働法の試験科目がありません(新司法試験で2006年から労働法が選択科目として入っています)。

労働トラブル相談は労働法の専門家である社労士へ

労働トラブルが発生したとき、労働者一人で会社に立ち向かうのは不利でしょう。労働トラブルの解決に必要な労働基準法、雇用保険法、厚生年金保険法、健康保険法などの法律の知識は学校では学ばないため、顧問社労士や顧問弁護士がいる会社相手となるとネット検索ができるとしても労働者は知識面でかなり不利です。

なにより労働者一人で会社に立ち向かうのは精神的にしんどいものがあります。会社に対して例えば一言、「労働基準法違反です」と言ってすぐに会社が「分かりました」となればいいのですが、なかなかそれだけでは解決せず、ある程度継続的なアプローチを会社に対して行う必要があるので誰かがサポートをしてあげなければ途中で「もう相手にするのはやめときます(泣き寝入り)」となります。

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