あっせん制度による労使紛争の解決

あっせんとは

あっせんとは辞書を引くと、「間に入って両者の間がうまくいくようにとりもつこと」となっています。「就職をあっせんする」といった使い方をします。

このあっせんという言葉を使った「あっせん制度」という労使紛争を解決するための制度を労働局や社労士会で利用することができます。このあっせん制度では使用者と労働者の間に労働局や社労士会が選んだあっせん委員が入って労使紛争の解決を目指します。

労働局の紛争調整委員会によるあっせん

労働局の紛争調整委員会によるあっせんでは、相対立する個々の労働者と使用者との間に学識経験者である第三者が入り、当事者双方の事情を聴取、整理、相互の誤解を解くなどして、当事者双方の理解を得て、労使紛争の円満な解決を目指します。

紛争調整委員会は全国47の都道府県労働局に設置されています。弁護士、大学教授、社会保険労務士等の労働問題の専門家である学識経験者により組織された委員会であり、この紛争調整委員会の委員のうちから指名されるあっせん委員が労使紛争解決に向けてあっせんを実施します。

社労士会の社労士会労働紛争解決センターによるあっせん

社労士会の社労士会労働紛争解決センターでは、労働者と使用者との間に労働問題に精通した社労士が入り、労使紛争の円満な解決を目指します。

社労士会は全国47の都道府県に一か所ずつ設置されています。

あっせんのメリット

①簡易である
②迅速である
③安価(労働局のあっせんは無料、社労士会のあっせんは1,080円~10,800円)
④円満解決可能
⑤プライバシー守られる
⑥民法上の和解契約の効力がある
⑦在籍中でもあっせんの申し立てをすることがある。
⑧あっせんを申請したことによる解雇その他不利益な取り扱い禁止

あっせんのデメリット

①強制力がない
②あっせんに協力しないことのペナルティーなし
③民事訴訟など裁判手続と同時に行えない

裁判のメリット

①シロクロの決着がつく(和解による解決もあり)
②詳しい経過が分かる
③多くの人に事件の内容を知ってもらえ多くの泣き寝入りしている人達が声をあげるきっかけとなる

裁判のデメリット

①時間がかかる
②弁護士へ代理を依頼すると高額な費用がかかる
③公開である
④手続きが難しい ⑤周囲から批判がある場合もある
⑥相手側が弱点を突いてくることによる精神的疲労がある

あっせん制度は使い勝手が良い

上記の通り、あっせん制度は裁判と比較してもかなり使い勝手の良い制度です。簡易、迅速、無料もしくは安価、プライバシーが守られるという点はまったく裁判制度と逆で、紛争当事者の精神的負担や、経済的負担を軽減します。

どれくらい迅速か?

平成16年度の統計で、あっせんの処理に要した期間は、1か月以内が66.4%、1か月を超え2か月以内が26.5%となっており、2か月以内で9割以上があっせんを終了しています。無料もしくは安価ということですが、労働局のあっせんを代理を依頼せず本人ですれば無料です。

特定社会保険労務士とは?

特定社会保険労務士とは司法制度改革の流れで導入された一定範囲のADR代理権を持つ社労士のことです。特定社会保険労務士となるにはいったん社会保険労務士試験に合格し、そこからさらに研修と紛争解決手続代理業務試験に通る必要があります。この試験に不合格、もしくは試験を受けない社会保険労務士は特定社会保険労務士になることはできません。

あっせん代理は特定社会保険労務士にならないとできない

特定社会保険労務士には、個別労働関係紛争促進法に定められた労働局の紛争調整委員会や社労士会の社労士会労働紛争解決センターにおけるあっせん代理が認められています。特定社会保険労務士ではない社会保険労務士はあっせん代理を行うことはできません。特定社会保険労務士は依頼者様を代理して、あっせん申請書の作成、提出代行、和解交渉、和解契約の締結を行うことができます。

あっせんの流れ

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